制作・進行管理
制作スケジュール表をExcelで回すときの落とし穴
「Excelの工程表で十分では?」——企画を通す段階や提出用資料としては確かに強いです。ただ、クライアント確認が1日遅れただけで後続工程を手動で全部ずらして、気づいたら_vFinal_と_v3_最終_が3つ並んでる状況は、WEBディレクターあるあるだと思います。
制作スケジュール表と案件進行管理シートを回すときに起きやすい版ズレや手動リスケの痛みを、実務目線でまとめました。
この記事でわかること
- 制作スケジュール表で版ズレ・手動再計算が起きる典型パターン
- Asana / スプレッドシート / Excel — それぞれが向く層(二極化の整理)
- Excel / スプレッドシートが向いている工程(企画・初版・提出 PDF)
- クライアント遅延1日で後続をずらすときのチェックリスト
- 共有 URL が効く場面と、要員管理まで求める場合は別ツール向きであること
なぜ「Asana でもスプレッドシートでも」足りないことがあるか
制作現場ではスケジュールが生き物です。チーム内のタスク管理に Asana や Monday を使い、クライアント提示用の工程表は Excel や Google スプレッドシートで作る——この二極化はよくある分担です。どちらも悪いツールではありません。
クライアントの戻りが遅れたり、デザイン修正が想定以上にかかると、Excel の行を一つずつずらす作業が発生します。クライアント確認用の表と制作中に動かす表が別ファイルのままだと、最新版がどれかわからなくなり、関係者への共有も遅れがちです。クリエイティブ進行表とスケジュール逆算表を両方持つ案件で顕在化しやすいです。
Asana は稟議・習得コスト・クライアントアカウント発行が重く、工程表の体裁でそのまま提出しづらいことも多いです。スプレッドシート共有は手軽ですが、先行タスク1行の変更で後続が連動しない(または式が壊れる)ケースは頻発します。本記事は乗り換え論ではなく、表計算を正本にしたまま、版混乱と手動リスケを減らす運用の話です。
制作進行でよくある失敗(5パターン)
版が3つになる(最新はどれ?)
「_v3_最終.xlsx が3つある…」——Slack に上がったファイル、クライアントへ送った PDF、外注に共有した Google スプレッドシートで、いま動いている版がバラバラ。「どれが最新?」と聞かれて、ディレクター自身が迷うこともあります。
原因はファイル再送文化と、閲覧専用リンクの未整備です。ファイル名の v2/v3 運用だけだと更新履歴が残りにくく、案件進行管理シートのエクセル版がフォルダに眠ったまま参照され続けます。
クライアント確認1日遅れ → 後続を手でずらす
「1日遅れただけで全部手で直して、結局ダブルブッキングした」——デザイン初稿の確認が金曜から月曜にずれただけで、コーディング着手・素材入稿・公開日を1行ずつ打ち替え、最新版 PDF をメールで再送する。これが週に何度も起きます。
後続タスクの連動が取れていないと、1箇所の変更が全体に波及してミスが増えます。日数連動の式が結合セルや別シート参照で壊れ、担当者ごとに「自分のところだけ直した」版が残ることも。WEBディレクターのスケジュール管理で、スケジュール逆算表の再計算に半日取られる案件は珍しくありません。
外注だけ古い納期で動いている
「昨日送ったはずの進捗が、コーダーには古い納期のまま」——ディレクターは水曜納品に変更済みでも、木曜納品のつもりで動いている。チャットの口頭連絡と、スプレッドシートの通知オフが重なると、外注スケジュールのズレは発覚が遅れます。
関係者ごとに別ファイルや別シートを使っていると更新漏れが起きやすいです。デザイン進行管理では「最新1本」を決めて見せる方が、口頭の再確認より効くことが多いです。
数式・セルが崩れる
「逆算では納品日が合ってるのに、進行表では1週間ズレてる」——日付の自動計算や行・列を誰かが誤って削除すると、案件進行管理シート全体が止まります。2つの表を別管理していると、片方だけ直して同期が取れなくなることもあります。
編集権限を広げすぎたスプレッドシートでは、シート保護なしだと復元にバックアップ探しが発生します。運用中に触る表は、提出用と分けて権限を絞るのが安全です。
スマホで読めない
外出先のクライアントやデザイナーから「横長で崩れている」「ピンチインしても読めない」と言われることがあります。PC 前提のレイアウトは、PDF スクショ送付で凌ぐ現場も多いです。
スケジュール逆算表をスマホで見せる必要がある案件は、最初から縦型・閲覧用 URL を想定した方が楽です。PC 前提の表を無理にスマホで見せる運用は、つらくなりがちです。
表A — Excel が向いている場面 vs 苦手な場面
Excel / スプレッドシートが向く場面と、制作中に痛みが出やすい場面の目安です。
| 観点 | Excel / スプレッドシート | 向き不向き | 制作現場の例 |
|---|---|---|---|
| 初版・たたき台 | ◎ | 企画段階の自由編集 | クライアントへの初回提案日程 |
| クライアント提出 PDF | ◎ | 体裁・ロゴ・注釈 | 見積とセットの工程表 |
| 遅延時の連動再計算 | × | 式崩れ · 手修正 | 確認1日遅れ → 公開日ずれ |
| 外注への最新版周知 | △ | 再送・通知漏れ | コーダー・デザイナー |
| スマホで確認 | △ | セルが小さい | 移動中のクライアント確認 |
| 複数案件の俯瞰 | ◎ | シート分け | 同時進行5案件 |
| 要員の空き状況横断 | × | リソース管理は別領域 | デザイナー3名を案件横断で割当 |
デザイナー・コーダーの稼働率マトリクスまで欲しくなったら、本記事の範囲外です(チーム向け PM ツールを検討)。
表A-2 — ツール別の向き不向き(二極化)
チーム内 PM と表計算、共有 URL(一般論)を比べた目安です。
| 観点 | Excel / SS | Asana 等チーム PM | 共有 URL + 連動表(一般論) |
|---|---|---|---|
| クライアント提出 PDF | ◎ | △ | △(スナップショット出力は別) |
| チーム内タスク | △ | ◎ | △ |
| 遅延時の後続連動 | × | ○(設定次第) | ◎(日付連鎖が主役) |
| 版混乱の解消 | × | ○ | ◎(URL1本) |
| 習得コスト | ◎ | △ | ○ |
表B — クライアント遅延パターンと即応(ディレクター用)
クライアント遅延が起きたとき、ディレクターがまず押さえる即応の例です。
| パターン | 典型原因 | 即応(1行) | 後続に効くタスク例 |
|---|---|---|---|
| 初稿確認の遅れ | クライアント多忙 · 決裁者不在 | 影響日数を明示して再合意 | 開発着手 · 入稿 |
| 仕様変更の差し込み | 追加ページ · 素材差替 | クリティカルな公開日だけ固定 | コーディング · テスト |
| 外注の遅れ | 稼働過多 · 見積ミス | 社内版とクライアント版を分離 | デザイン · 実装 |
| 素材入稿の遅れ | クライアント側準備 | 後続をブロック扱いにマーク | コーディング · 公開 |
表は経験則です。案件により優先順位は変わります。
おすすめの運用パターン(併用)
制作スケジュール表と案件進行管理シートを、段階ごとにどう役割分担するかの例です。
| 段階 | 担当 | 使うもの | 成果物 |
|---|---|---|---|
| 提案・見積 | ディレクター | Excel テンプレ | クライアント提示用工程表 |
| 制作中(社内) | PM / ディレクター | スプレッドシート or 共有ツール | 常に最新の1本 |
| クライアント報告 | ディレクター | PDF(スナップショット) | 週次報告用 |
| 遅延発生時 | ディレクター | 連動再計算できる手段 | 影響範囲の再合意メール |
提出正本は Excel のままでもよい。Excel を完全に置き換える必要はなく、運用中の「動く1本」を分けるのが現実解です。クライアントに渡す PDF と、社内で毎日触る表を混ぜないだけで、版ズレの半分は減ります。
進行表の典型列とコピペの現実
クリエイティブ進行表でよく使う列の構成例です。
| 列の例 | メモ |
|---|---|
| タスク名 · 開始日 · 終了日 · 所要日数 | 連動再計算の核 |
| 担当者 · クライアント確認有無 · ステータス | 外注・先方待ちの可視化 |
既存シートからプレーンな範囲のコピペが現実的です。セル結合・マクロ付きシートは取込できないツールも多く、提出用と運用用を分けた方が安全です。自社の案件特性に合わせて列を足したり削ったりして、出力の優先(閲覧 URL → xlsx → PDF など)を決める制作会社も増えています。
向いていないケース(誠実線)
要員の空き状況の横断管理や本格ガントまで求める場合は、本記事のスコープ外です。専用ツールの検討を併せて考えるとよいでしょう。
- 要員の空き状況を案件横断で見たい → 本記事のスコープ外です。
- クリティカルパス・依存矢印まで欲しい → 本格ガント PM の領域です。
- 見栄え重視の1枚ロードマップだけ欲しい → PowerPoint 提出が向くことが多いです。
よくある質問
制作スケジュール表をエクセルで管理する際、版ズレを防ぐにはどうすればよいですか?
「動く1本」を決め、クライアント提出用 PDF と運用中の表を分けます。ファイル名の v2/v3 運用だけに頼らず、更新したら関係者チャットに一言連絡する習慣をつけると混乱は減ります。週次以上の更新がある案件は、閲覧 URL で最新を示す方法も検討してください。
WEBディレクターのスケジュール管理で、確認遅延による後続工程の手動変更を減らすには?
クライアントの戻りが遅れて修正が連鎖する案件ほど、手動リスケが膨らみやすいです。影響日数を先に合意し、公開日など固定マイルストーンだけ錨にします。日付連動ができる手段(または運用表を1本に限定する)で、セル単位の打ち替え回数を減らすのが現実的です。
案件進行管理シートを共有する際、クライアントに毎回 PDF を再送しなくて済む運用はありますか?
初回・正式提出は PDF で問題ありません。更新頻度が高い期間は、閲覧用 URL で「いま見ている版」を1本に寄せ、PDF は里程碑だけにすると再送負荷が下がります。共有フォルダを使う場合はファイル名ルールを統一しておくとよいです。
クリエイティブ進行表の雛形を、URL1本で最新状態に保つ手法はありますか?
雛形そのものは Excel で十分なことが多いです。制作中は別の共有先(クラウド工程表など)を正本にし、雛形を毎日直接いじらない運用が版ズレを防ぎます。逆算表と進行表を別管理する場合は、変更時に両方を更新するルールを決めておくとミスが減ります。製品による共有は準備中の領域です。
スケジュール逆算表をスプレッドシートで作った場合、スマホから崩れずに閲覧できますか?
横長の Excel/SS はスマホでは崩れやすいです。モバイル閲覧が前提なら、縦型の一覧や閲覧専用ページを別途用意する方が安全です。PC 前提の表を無理にスマホで見せる運用は、つらくなりがちです。